俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

ラキ男のこと(2)




ラキ男は老夫婦に飼われていた。
80歳を超えたご主人が病に倒れ、介護に心身をすり減らす70代半ば過ぎの夫人にラキ男の面倒を見る余裕はなくなった。
動物病院に預けたのが預けっぱなしとなり、「もう飼うのは無理」となって、ついには健康な犬の「安楽死」という選択肢が浮上したという。
自分たちに飼う能力がなくなったその責を犬に負わせ、命で償わせるわけだ。
(もともと本当に飼う能力があったのかという疑問はここでは措く)
困った動物病院から相談を受けた私たちが、結局、この子を引き受けることになった。

私は飼主の夫人とも直接会って話している。
高齢で犬を飼おうとしたときにこの事態を考えなかったのかと尋ねた私に、夫人はこう答えた。
「本当にそう思います。ちゃんと考えるべきだった。その前に飼ったキャバリアがとてもいい子だったので、コーギーも同じだと考えたのですが、全然違っていた」

全然違っていたコーギーを、この老夫婦は持て余したのだろう、庭で放し飼いにした。私が訪ねた家にはかなり広い庭があった。
ベランダの犬小屋を寝場所にしていた。高齢になってからは夜には家屋の一隅に入れていた、という話だった。
そうやってこのコーギーは9歳まで暮らしてきたのである。

ああ……私は内心ため息をついていた。
どうして人は自ら不幸の種を蒔くのだろうか。
その刈り入れは人任せなのだ。



2013年12月02日(月) No.157

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