俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

ラキ男のこと(5)


こんなのを見つけた。
インターネット上に流布している画像で、ソースは不明であるが、これは間違いなくコーギーの幼犬だろう。



こんなにかわいい生き物は明らかに犯罪的である。発禁ものだと思う。
こういう子たちがペットショップのガラスケースに入っていたら、そしてたまたま犬を飼いたいと思ってその場を訪ねていたら、「この子を手に入れたい!」という衝動に屈せずにいるのは難しいかもしれない。

そういうときには、どうか心をしずめて犬種図鑑を開いていただきたい。
お持ちでなければ図書館で閲覧してもよい。
たいていの犬種図鑑には夢でも見てるんじゃないかというくらい犬種の長所ばかり書かれているので、解説文に目を通す必要はとりあえずないだろう。
コーギーがどういう犬に分類されて、その仲間にはいったいどんな犬種があるのかを見ていただきたいのだ。

コーギーは、ハーディング・ドッグ、牧畜犬といったジャンルに分類されている。
では、ここには他にどんな犬種があるのか。
ジャーマン・シェパード、ボーダー・コリー、マリノワ、グローネンダール、オーストラリアン・キャトル・ドッグ、ラフ・コリー……。
(牧畜犬にロットワイラーやマスチフのようなガードドッグを含めている図鑑もあるが、ここではガードドッグは別格とする)

強靭無比な体力と、とびっきりの優秀性で知られている犬種ばかりである。
いずれも、そのとびっきりの優秀性は、とびっきりのトレーニングのもとでしか発揮されず、さもなければとびっきりハタ迷惑かつ、とびっきり困難になりうる犬種としても知られている(※)
いってみれば、このジャンルのどの犬も飼い主に法外な量の献身(しかも正しい方法での)を求める一方、その見返りも多大なのである。
コーギーはそうした連中のお仲間なのだ。

(※)個人的にはラフ・コリーは例外的にマイルドだと感じているが、それにしたって安易に飼うことができないという点に違いはない。


コーギーとボーダー・コリーは見かけは大違いだが、どちらもハーディング・ドッグだ


あなたはジャーマン・シェパードの子犬が、ペットショップのガラスケースに無防備に横たわっていたとして、衝動的に手に入れたいと考えるだろうか。
よほど無知無謀でなければ、そういう行動には踏み切らないはずだ。
だがコーギーの場合、その小さな体躯に目を欺かれて、衝動的に一線を超えてしまう人が少なくない。
ラキ男も間違いなくそういった例のひとつだったろう。

コーギー愛好家はなかば誇らしげに「コーギーは小型犬の皮をかぶったジャーマン・シェパードだ」と言う。
あるいは「コーギーは小型犬のかたちをした大型犬だ」とか「大型犬のハートをもった小型犬だ」といった言い方もされる。

コーギーは、扱いの容易な小型犬を探している人が飼うべき犬では本来ない。大型犬との暮らしを希望している人の選択肢にこそ入れていただきたい犬だと私は思う。
あの小さな身体いっぱい大型犬の強靭さと心意気が詰まっている。
なんて天晴れなヤツら!とは思わないだろうか。


2013年12月16日(月) No.160