俺 流
[ Perro Dogs Home 預かり日記 ]
交友録---うえ(2)
うえとボニーはほとんど同じ体格をしている。
全体の雰囲気は「一見すると」双子のように似ている。
全身の被毛の色だけが、ほぼ真っ黒vs.ほぼ真っ白と極端なコントラストを描いているので、大柄な2頭が仲よく(というより狂熱的に)遊んでいる光景は周囲の人の目をひかずにおかない。
一度、協力動物病院の待合室で遭遇した2頭は、(いつものことだが)出会った瞬間に正面から思い切り身体をぶつけ、相撲でいう四つの格好で取っ組み合った。
待合室でそれを見たお年寄りの男性は声をあげて笑った。
うえはボニーよりやや脚が長く、深くくびれた腰は高い位置にある。
全身からより精悍な雰囲気を発散させており、実際、運動能力はボニーより高いだろう。
ボニーはラブとしては十分にスマートだが、うえとこうして間近で並べてみると、脚が短く寸胴の、いかにもラブ的なドラム缶体型をしていることがわかる。
ドッグランで存分に駆け回っているときの2頭には、見かけどおりの差があるように思う。
うえのほうがより身軽で俊敏。
ゼロスタートからの鮮やかな急加速、高速で切れ味のよいナイフのような急角度のターンを切ったり、呆れるほど軽くジャンプして相手をかわしたりするときの機動性という点で、ボニーは明らかに見劣りする。
一方、ボニーで見ものなのは、やや重さを感じさせる身体が、初速こそ遅いものの、そこからグッ、グッと何段にもわたって息の長い加速していくときの底知れぬ力感である。
2頭の遊びはいつも、うえが走るのをボニーが全力で追うという展開ではじまる。
ドッグランで2頭を遊ばせたときのことだが、長方形をした広いドッグランの反対側の角からほとんど同時にスタートした2頭は、相手めがけて対角線上をまっしぐら中心に向かって走り、ほぼ全速力で正面衝突したのである。
「ギャン!」という短い声が一瞬だけあがり(たぶんボニーの声だ)、2頭ともその場で弾けとんだ。
ドッグランにいた皆が息を呑んだ。
次の瞬間、うえはナニゴトもなかったかのように立ち上がり、軽い足どりで歩き去った。
ボニーは「誰ですか、こんなひどいことをしたのは」という弱った目で周囲を見回しながら起き上がり、しばらくの間、腰が思いきりひけていた。
うえはおそらく脚の1本ぐらい落とし物しても平然と走りつづけるのだろう。
ボニーはそれに比べると、おそれ、あるいは弱さというものを少し余分に持っている。
2012年05月28日(月)
No.127
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