- 2007/03/29
魔法の杖はあるのか

「ただ甘噛みだけを直せれば、あとは大丈夫なんです。トレーニングまでする必要はありませんよ。甘噛みをやめさせる方法だけ教えていただければいいんです」

飼い主さんから、そういった言葉を聞くことが少なくありません。
ここで、「甘噛み」を、「ムダ吠え」「攻撃性」その他どのような問題行動に置き換えることも可能です。
こういったことをおっしゃる飼い主さんは皆、ひと振りで問題行動を解決する魔法の杖を期待しているようです。
しかし、そんな魔法の杖は存在するのでしょうか。

先日、あるドッグトレーニングの教室に参加しました。
Perroの保護犬のトレーニングに、ピンチヒッターのハンドラー役としてかり出されました。
何もできませんでした。無惨なほどに。
私は、その責任は犬の側にあると考えました。「こいつに何ひとつ訓練が入っていないからできないのだ」と。
ところが、同じことをドッグトレーナーさんがやると、無能なはずの犬が見違えるようにパキパキとコマンドに従って動きだします。突然その犬の背筋がしゃきっと伸びたかのようでした。
顔から火が出るような気分でした。

私の知っているやり方と、この教室のメソッドはまったく違っていました。私は犬の扱いを多少は知っているつもりでいましたが、じつはショックによる強制抜きには、自分の望むように犬をコントロールできないことを知りました。

翌週、同じ教室にふたたび同じ犬と参加しました。今度は少しうまくいきました。トレーナーさんは犬ではなく、真っ直ぐ私に対して声をかけました。「前より良くなりましたね」と。
そう、問題はまず人の側にあるのです。飼い主が変わらなければ決して犬は変わりません。トレーニングはそれを――飼い主さん自身の不足を――知るための過程なのです。

自分がいつも習慣的にやっていること、正しいと思っているやり方が、無力だと知るのは、愉快なことではありませんでした。自分自身に軌道修正を強いるのは苦痛ですらあります。しかし、一緒に暮らす犬の問題行動を直そうと思うのなら、どうやら、そこからスタートする以外の近道はないようです。(C)


- 2007/03/22
夢と現実の間で

広ーいお庭の家に住んでて、とんでもなくお利口な犬が思いっきり走り回って……というのは夢です。
小ーさなマンションにごく普通の中型犬と住んでます。

いつも私のことを見つめてくれて、普段はおとなしいのに、危難のときは守ってくれる犬……というのは夢です。
呼ぶと「なにさ?」的な目でこっちを見る犬は、不安を感じると私の後ろに隠れます。

ブラッシングやシャンプーが大好きで、いつもキレイ……というのは夢です。
膨大な抜け毛があるのに、ブラシッシングの間は落ち着かずあちこちウロウロ。ドライヤーは大嫌いという犬です。

とりたてて何の芸もない愛犬ですが、でも少しずつ、いろんなことができるようになってます。
超苦手が、ちょっと苦手。ご褒美あるなら我慢。そしていつの間にか平気……そんな進化を見せてます。
その小さな一歩ずつが、ものすごく嬉しいのです。

それに、私も犬のことや、犬のおかれてる現状を少しずつ知り、自分の夢は夢として認識するようになりました。

Perroのスタッフです、と口にするのも恥ずかしいほど新米の私ですが、夢と現実の間に、自分でもトライできる、ちょっとした良い空間があることを発見しました。

我が家の愛犬のように、どの子も幸せな自分の家族を見つけ、少しずつ、いろんなことを吸収し、いろんなことを人間にも教えてくれる――そんな犬たちを応援したいと思います。(N)


- 2007/03/14
二度と……

「預かりのボランティアをやってみたい」
救援活動をしている団体のドアを叩いたきっかけは、ごく軽い気持ちでした。
間もなく我が家にセンターからの保護犬がやってくるようになりました。

初めての預かりワンコはちょっと臆病でしたが、素直で手のかからない子でした。
我が家の先住犬ともほどなくして遊びはじめ、クタクタになるまで取っ組み合っていました。

その次の子はおとなしい落ちついた子でした。
先住も年上のその子にはいつも敬意をはらうように、下になって遊びに誘っていました。
ただ、トイレのしつけはゼロで、トイレトレーニングをしながら粗そうの掃除にあけくれました。
その次にやってきたのは若く元気いっぱいの子でした。
先住とは激しく遊んだり、厳しく教育されたりしていました。

4頭目は甘えん坊だけど反射的に「ウー」と言ってしまう不器用な子でした。
「ウー」と言わなくても大丈夫だとわかってもらえるように、人間との信頼回復に努めました。

驚くほどに、どの子も違っていました。
もともとの性格もさることながら、放浪して捕獲されセンターで過ごし、犬生の大波を乗り越えてくるのですから、心に傷を追っているかもしれないし、何かしら問題行動をかかえているのかもしれません。

私達にできるのは愛情を伝え、時に厳しく、人間との信頼関係を取り戻し、そして二度と裏切らないことだと思います。(H)


- 2007/02/27
一時預かりボランティア募集中!

日本では、迷子になったり捨てられたりして各地の保健所等に収容される犬が年に約18万1千頭います。その内、飼い主に返還された子、譲渡された子の数は、約2万5千頭(14%)。残りの約15万6千頭(86%)は、お迎えがないまま収容期限(4日〜7日 日数は自治体により異なります)が切れ、二酸化炭素による致死処分となっています。 (出典 平成16年度 環境省、厚生労働省調べ)

1日にして427頭もの子が来る日も来る日も致死処分の運命を辿っていることになります。このままでよいはずはありません。迷子、飼育放棄、無秩序な繁殖を失くしていく事が最重要課題です。

一方、東京都など、致死処分数を減少させるための方策の一つとして、譲渡の道をひらいている自治体もあります。

こうした自治体の譲渡システムのお蔭で、私達のような保護団体は、致死処分の運命にある犬たちを引き出すことが可能なのです。しかし、残念ながら、すべての子を引き出せるわけではなく、預かり先が確保された子たちしか出してあげることができません。

「一時的に避難させてくださるご家庭」があることで、救える命があります。

ペット飼育可の住環境におありで、ご家族の中に動物アレルギーの方がいらっしゃらない方がいらっしゃいましたら、一時預かりボランティアをご検討いただけると大変有難く思います。一時預かりをすることにご家族全員の賛同が得られましたら、是非、ボランティアのページからお申し込みくださいませ。

運命の新飼い主さんとのご縁を探す間の日々を、預かりボランティアさんの元で安心して過ごせることでしょう。どうぞよろしくお願いいたします。(U)

※ 保護犬は、まず、スタッフ宅やトリマーさんのところでシャンプーし、その後、動物病院にて健康診断、ワクチン接種、不妊・去勢手術をした後に、預かりボランティアさんのところへ行きます。一時預かり中の医療費は会が負担します。


- 2007/02/17
船出に際して

いろいろな方のお力を借りて、Perro Dogs Homeが無事に船出することができました。
この場を借りて、お礼を申しあげます。

Perroの発足はいつだったのかとあらためて尋ねられると、答えるのは案外、容易でありません。

「新しい会を立ち上げよう」と1人の頭にひらめいた瞬間がそうだったのかもしれません。
あるいはその後ごく少数のメンバーが集い、まだ頭のなかにあるにすぎない自分たちの会についてとりとめなく語り合ったとき、と考えることもできます。
また、東京都動物愛護相談センターに譲渡団体の申請を出した昨年12月、晴れて譲渡団体となった今年1月中旬、さらにはセンターから1頭目を引き出した1月末、ホームページを公開した2月1日と、いくつかの私たちにとっては忘れがたいメルクマールがあります。

しかし私が、新しい活動のはじまりを本当に実感できたのは、保護犬にお申込みいただいた方に電話をかけて言葉をかわした瞬間であり、新しく開設したホームページをご覧になった方とメールのやり取りをしたときでした。

会の設立準備段階は、同じような考え方をする、仲間内だけの活動に終始しがちになります。
いわば閉ざされた回路――その回路の一端が募集活動のはじまりとともに開かれると、そこから新鮮で冷涼な外気が吹きこんできたかのようでした。
犬との出会いを真剣に求めている人々とこういうかたちで直接ふれあうことが、どれほど私たち自身のためになっているのか、あらためて感じさせられました。

今後の活動で私たちの対応に至らない点があるかもしれません。しかし私たちは1歩ずつでも前に進み、自らの不足を埋めていくつもりです。
これからの私たちの活動を寛容に見守っていただきたいと思います。そして、私たちが道を踏み外したとお感じのときには容赦なく声をあげていただきたいと思います。(C)