二人は連れだって家を出た。いい年の男と少女と犬と。ホラスは首輪に革紐をつけており、ルーシーは手袋をはめた手にその端を握っていた。厚い毛織りの帽子を耳まで引き下げてかぶり、新しいジャケットのジッパーを首もとまで上げていた。
ルーシーは蝶番をキーッときしらせて(教会堂の)門を開けた。二人は小道を上がっていった。ポーチの中に貼り紙があった。「どうか、お入りください。ただし、犬は中に入れません」 それで彼らはホラスの革紐の端を外側のドアのハンドルに結び、彼をドアマットの上にすわらせた。ホラスは不本意そうな顔をしていた。
翌日、エルフリーダは犬を近くのプードル・パーラーに連れて行った。カットとシャンプー、それにドライヤーを経て彼女の手にもどってきたとき、犬の毛はフワッとやわらかい手ざわりで、かすかにレモネードの香りを漂わせていた。
エルフリーダは買物籠を片手に下げ、革紐の端をホラスの首輪にしっかり止めてコテージのドアを後ろで閉ざし、狭い小道を歩いて門から出ると、歩道を村の郵便局兼ストアの方角に歩きだした。 十月半ばの冴えない灰色の午後だった。
ロンドンを見限って田舎暮らしを始める前のこと、ある日、エルフリーダ・フィップスはバターシー野犬収容所を訪ねて犬を一匹、譲りうけた。すがりつくような目で、あたらしい主を待っている犬たちの様子に心を痛めながら、三十分たっぷり見て回ったすえにその犬が目に留まったとたん、エルフリーダは思った。「わたしがほしいのはこの子だわ」その犬は檻の桟にくっつくようにして、潤んだ黒い目で彼女を見上げていた。もともと大きな犬を望んではいなかったし、膝に乗ってキャンキャン鳴きたてる、神経質な犬を飼う気もなかった。この子はちょうどいい大きさ、犬らしい大きさだわ。 やわらかい毛がその犬の全身を覆い、目の上に垂れかかっていた。耳はピンと立っていることもあるが、ピタッと寝かされていることもある。尻尾は鳥の尾羽のように誇らかに突っ立っていた。毛の色は白に茶色の不規則なぶちで、茶色の部分はちょうどミルクココアの色のようだった。系統は?——という問いに係の若い女性は、「ボーダー・コリーとビァデッド・コリーが混ざっているんじゃないでしょうか。そのほかにもたぶん、いろいろ」と答えた。系統なんて実際のところ、エルフリーダには問題ではなかった。彼女はその犬のやさしい表情に惹かれたのだったから。 エルフリーダはバターシー野犬収容所に応分の寄付金を置くと、犬を彼女の隣にすわらせて家路についた。犬は満足げな面持ちでポンコツ車の窓ごしに外の景色を眺めていた。こういう暮らしに憧れていたんだと言わんばかりだった。
去る11月18日、所沢市のドッグランの一面を借り切って、Perroの主催する秋冬の運動会がおこなわれました。
朝から快晴に恵まれたこともあったのでしょう。思いがけず40人以上のご参加をいただきました。そこに27頭の犬が加わるのだから壮観です。
なんとも朗らかで楽しい集いになりました。
「うちの子にこんな能力があるなんて知りませんでした」
「他の犬とは遊べないと思っていたのに……」
「こんなことができるんですね。驚きました」
こういう言葉を少なからぬ飼い主さんからいただいたのは、私たちにとって飛びあがりたいほど嬉しいことでした。
ご参加いただいた皆さんに、心からお礼を申しあげます。
また春にお会いしましょう。