全国で殺処分されている犬と猫の数、およそ44万匹……。
保護団体が能力限界まで頑張っても救いきれない命。
残念ながら、適正飼養可能な家庭の数には限りがあります。また、各家庭が飼養できる犬猫の数にも限りがあります。
これだけの数の犬猫が日々致死処分されている一方で、無秩序な繁殖が今なお行われています。

A.適正飼養できる家庭の数 < B.現在飼養中の犬猫の数+繁殖される犬猫の数+致死処分から救出される犬猫の数

Bの中に、椅子取りゲームではじかれ、行き場を失う子はいないでしょうか?
不妊手術で救える命があることを、もっともっと多くの方に知っていただけますように……。


近年、獣医臨床の現場において遺伝性疾患を抱える症例が増えていると報告されています。大きな要因は『無秩序な繁殖』であると考えられています。
欧米ではこの問題に対して40年以上前から取組みが始められ、純血種の遺伝性疾患減少に成果を出しています。

例えば、股関節形成不全の好発犬種とされている『ラブラドール・レトリバー』。
JAHDの調査によると、調査した犬の46.7%にこの疾患の発生が認められたそうです。一方、米国での発生率は11.7%。日本ではアメリカの実に4倍近くのラブラドール・レトリバーが股関節形成不全に苦しんでいるのです。

小型犬の例では、シーズーであれば、少なくとも両親(理想的には祖父母と兄弟姉妹)のOFAの証明書(hip)とCERFの証明書(有効期間1年間)(eyes)が必要と言われています。
しかし、実際はどうでしょうか?
これだけ眼の疾患に苦しんでいるシーズーに多いというのに「CERF? それ何ですか?」というブリーダーやペットショップも多いのではないでしょうか? 

遺伝性疾患に苦しむ純血種の犬が増えている昨今。
『無秩序な繁殖』をさせないことは、犬の福祉を低下させる遺伝性疾患拡大の防止に一役たてるということも多くの方に知っていただけますように……。

※OFA:Orthopedic Foundation of America certificates
※CERF:Canine Eye Registration Foundation certificates
※JAHD:日本動物遺伝病ネットワーク http://www.jahd.org


繁殖制限のため以外にも、不妊手術によって、♀では乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、♂では前立腺の病気、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫、セルトリ細胞腫が防げるといわれています。


オスは、発情期のメスを求めて年中交尾可能です。
発情期の鳴き声や脱走などからも伺えるように、性的ストレスは相当なものです。
だからといって、本能のまま交尾・繁殖させるわけにもいきません。
生涯・子孫に渡って責任を持てる命を産ませる目的がない場合は、不妊手術をした方が穏やかに暮らせます。


猫の尿のにおいのもとになる物質は猫特有のたんぱく質「コーキシン」で作られていることが、理化学研究所と岩手大のグループの研究で判明。コーキシンとフェリニンは猫が成長するにつれて増え、また、未去勢の雄の方が去勢したオスより「約4倍」も多かったそうです。 

出典:毎日新聞ユニバーサロン 
http://www.mainichi.co.jp/universalon/news/200610/21/1021m167-400.html

不妊手術は確かに人間の身勝手かもしれません。
しかし、私たちは、人間の身勝手で年に44万匹もの命が絶たれていることを忘れてはなりません……。 
殺処分を減らす目的以外にも、不妊手術には、上記のように、遺伝性疾患拡大を防ぐ〜ホルモンに関係する病気を防ぐ〜発情期の性的ストレスを軽減する〜オス猫の尿臭を軽減する〜といったメリットもあります。
不妊手術の必要性を1人でも多くの方にご理解いただけますように……。 (U)