俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

やって来た柴




柴の男の子がわが家にやって来た。
預かり前はせいぜい2週間程度のショートステイの心づもりでいたが、諸事情から譲渡が決まるまで預かることになりそうである。

柴の男子というと、これまで期間の長短あわせておそらく両手を超えるくらいの数を預かっている。
好きな犬種ではあるが、前回の預かり犬・カンペイの死が私の深いところに――自分でもその所在がつきとめられない場所に――容易には拭い去ることのできない何かを残したらしい。もう5年も前のことなのに。
積極的に長期預かりをする気持ちはなくなっていた。それをいうなら柴に限らず、どんな犬種であってもなのだが。


大きな公園に連れていくと、丈の高い雑草の生い茂る場所では、喜びいっぱい走り、嗅ぎまわって草花の匂いを体中に満たしているようだった。


やって来た柴は、これ以上ないほど柴らしい柴だった。
ほとんどの人が描くであろう柴のイメージをそのままなぞったらコイツになりました、みたいな。
ただし、その振る舞いは予想外に人なつこいのである。猛々しさというものがまったくない。
神経症的なものとも無縁。ちょっと拍子抜けした。


歩くのを拒否して寝技に持ち込む。仰向けになって両手を上下に振る。


到着して24時間内に家内の前でコロンと自分からお腹を見せた。柴の男子が、である。
さらに仰向けに転がったまま両手(両前脚)を胸の前で合わせて、クイックイと前後に振るという芸当を見せはじめた。
とくに理由も見当たらないのにひとりで勝手に始めることもあれば、「オレは歩きたくないのだ」と道路に寝転がってこのワザを繰り出すこともある。
一方で、いわゆる「シツケ」はまったく入っていなかった。マテ、スワレなどまったくできないし、そういう人との関係など考えたこともないのか、まったく堂々と無反応である。

まあ、そんなヤツであるから、こちらもいろいろ気が楽になった。
2020年10月08日(木) No.194