俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

カンペイ海に行く(1)




ここに書いたのは1年半も前の話である。
お前の預かり日記は時間をどんどんさかのぼってタイムトラベルしてるのかと呆れられても当然なのだが、書きかけて放っておいたのがどうにも気持ち悪く、書き散らした虫食い文章に1年半という時差で補足し、恥をしのんでアップすることにした。
ですから皆さんがお読みのエピソードは1年半前に起こった昔のできごとであります。

公園やドッグランに出かけて、たびたびカンペイが大喜びする姿を見て、次は海がいいんじゃないかと漠然と思った……。

で、元旦(2014年の、ですけど)に車で千葉の富津岬に出かけたのである。家内と娘、そして私とカンペイで。
見晴らすかぎりの砂浜で思いきり遊び喜ぶカンペイを見るのはさぞ楽しかろうと。
浅慮であった。


「トゥルーへの手紙」オフィシャルサイトから


「トゥルーへの手紙」といういっぷう変わった映画をご覧になっただろうか。
この映画には全編を貫く一本の物語があるわけではない。
いろいろな映像がつぎはぎされ、そこに「反戦」「友愛」「反差別」「生と死」「若さと老い」といった通奏音が奏でられるなか、画面いっぱいに登場しては私たちに圧倒的な印象を与えるのはもっぱら「犬たち=善なる生の象徴」の役目なのである。
私などはもう、何頭ものゴールデンが美しい海岸を嬉々として爆走するシーンを見ただけで胸がいっぱいになってしまった。

ゴールデンたちは渚を走り、砂まみれになって遊び、海に突進し、潮水をかぶり、サーフボードに乗る。
これっぽっちもまじりっけのない生の謳歌。制作者のいう「人生のあらゆる瞬間につなげたいと願う、かけがえのない瞬間」の無上に美しい切り絵の数々である。
(そのゴールデンたちみんな、制作者――写真家だという――の飼い犬らしい。なかの1頭がトゥルー。なんて素晴らしい犬まみれ生活だろう)


「トゥルーへの手紙」オフィシャルサイトから


「砂浜で遊ぶ犬と私」というシチュエーションは、多くの飼い主が一度は(あるいは何度となく)夢見る光景ではないだろうか。
だがカンペイはトゥルーではなかったし、私はトゥルーの飼い主ではなかった。
2015年07月09日(木) No.188