俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

ラキ男のこと(1)





ここでラキ男(ラッキー)について書きたい。
ラキ男と4日ほど暮らして、私はこの小心でひたむきな男が不憫(ふびん)でならなくなってしまった。

ラキ男の「前科」についてはよく聞いて知っている。
だからこれまでのどの犬に対するよりも増して、私は注意深くこのコーギーと接しているつもりだ。一緒にいるときには、自分に可能なかぎりその一挙手一投足を観察しようとしている。
そこで私が見たものは?
懸命に、あまりにも懸命にすがりつこうとしている小っぽけな魂だった。
すがりつこうとしている先にあるのは私ではない。そう見えるときもあるが違うだろう。

「生活」だと思う。
自分の絶対の居場所が確保され、やすらいで、すっかり武装解除ができ、信頼できる人間の傍らに守られて(自分も守り)、果たすべき役割を与えられ、そこに全力を投入し、ホメられ、信頼され、愛され、昨日と同じ明日が保証された――ただの生活、である。

もう10年間もラキ男はそれを求め続けてきて得られずにいるのだ。
そして彼の残りの時間はどんどん少なくなってきている。

ここがそんなことをやるべき場所ではないと承知で(前日ああ書いたのに)、私は彼の来歴にちょっとだけ触れてみたいと思う。

2013年11月30日(土) No.156