俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

サクの秘密




サクには秘密がある。

排水管の蛇口がゆるいのだ。ゆるゆるといっていいぐらいである。
いわゆる「嬉ション」「びびりション」をする。

サクがやってきたばかりのころ、私が帰宅して「サク〜」と呼ぶと、喜色満面、飛ぶように駆け寄ってくるのはいいのだが、私の前でチョロっと小を洩らした。
行動の結節点(節目)で洩らすことも少なくなかった。
たとえば、散歩に出る直前、車から降りる(乗る)直前直後……など。
緊張(高揚)のピークとシッコが連動しているようだ。
オリンピックに出場していたら、さぞやたいへんなことになっていただろうと思う。

サクはオムツ持参でわが家にやってきたのだった。
下の写真のサクをご覧いただきたい。
尻尾の付け根のあたりにピンク色のものが見える。
これは伸縮性の布地でできたオムツカバーのようなもので、ベルクロでとめて固定するようになっている。
で、内側に人間の女性の生理用品がちょうどセットできるようになっている。
私はこれまでの人生で生理用品を使った経験がなかったので、装着の際は、やや緊張し、ドギマギと少しだけ頬を赤らめていたかもしれない。

しかし、これはじつにスグレモノだった。
装着による違和感はほとんどないらしく、サクはまるで気にせず飛びまわっていた。
じつは7月21日の日記に掲載したサクとカンペイの室内格闘写真――よく見ていただければ、サクがピンク色のオムツカバーを着けているのがわかるはずだ。
こうやって暴れても外れることはなかったし、シッコが漏れることもなかった。
ときどき、サクがオムツカバーを着けたまま部屋の片隅でシッコの姿勢をとっているのを見つけて、なんだかおかしくて、サクに声をかけたくなった。
お前のパンツに放出されてるだけなんだよ、と。



わが家にサクがやってきて5日ほどたってから、そのオムツカバーを外してみた。
嬉ション、びびりションは、きれいさっぱり姿を消していた。
私はなにか晴れ晴れとした気分がして、前よりもずっとサクが好きになった気がした。
カンペイのシッコがこれほどの大混乱に陥っている横で、サクはまだ子どもなのにえらいなあ、なんて思った私はバカだった。

カンペイが床にシッコの大放出をした際、ときどきそこから数十センチの場所に、小放出されていることがあった。
大きな湖のかたわらに小さな池がポツン……という感じで。
なぜだろう。不思議だった。
大放出の部分を片づけながら、近くにひっそりとある小放出をうっかり踏んでしまうことがあった。
「カンペイってワケわかんないヤツだよな。まとめて1か所にしてくれればいいのに。わざわざ小分けしやがって」
と家内にコボしたものである。
カンペイはとくに釈明しなかった。

しかし、サクが帰ってからハタと思いいたったのだが、あれはサクのシッコだったのではないか。
預かりボランティアさんに電話で尋ねてみた。
「サクちゃんは嬉ション以外のシッコはちゃんとできているんだよね」
「いえ、まだできてません。違う場所にすることありますよ」
うえーっ!?
少し前にわが家に滞在した兄妹犬のタロ君が排泄に関してはきわめて潔癖だったし、目の前で何回かシートに排泄するサクを見て、私は実力を過大評価していたのだった。
(※タロよりだいぶ時間がかかったが、この後、サクも預かり宅では、室内で完璧にシートでできるようになったそうである)

なんとうかつだったのだろう。
小さいほうはサクのシッコだったのだ。カンペイにしては妙に少量だったのも腑に落ちる。
カンペイが大砲を発射する横で、サクはせっせと小火器による援護射撃をおこなっていたのだった。


サクはもうこないでいいと思う(キリッ
2012年08月09日(木) No.147