俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

サクとカンペイ(2)



カンペイの頭に前脚を置くサク

6月中旬のサクの2度目の来訪時に、カンペイのサクに対する態度は微妙に変わっていた。
サクが最初に滞在したときと違って、カンペイには「ここオレんち」という余裕のようなものが生まれていた。
少しだけ距離をおくことができたのである。
前回はサクの嵐に翻弄される哀れな小舟であり、はてしなく仕掛けられる遊びに何もわからないまま応じざるをえなかったかわいそうな男であった。
それが6月には、サクが熱心に遊びに誘いかけても「オメーのお子ちゃま遊びには付き合わねーよ」と、床に伏せしたまま動かないようなことが何度も起こった。

サクは口にオモチャ(とサクが考えるもの)をくわえて、カンペイの目の前で振り回したり、放り落としたりして、しきりに遊びに誘いかけようとする。
あるとき、サクはドーナツのような形をしたオモチャをくわえてカンペイの目の前で何度も振って見せた。
まず遠くから、それでダメなら、うんと近づいて。
だが、カンペイは素知らぬ顔を決めこむ。

業を煮やしたサクは、右前足を伸ばすと、サンペイの頭をぐいと掻いたのである(上の写真)。
「ほら、遊んでよ」と。
いや、これには温厚なカンペイも激怒しましたね。
跳ね上がって「ガウッ!」とサクを一喝したのである。


カンペイを見るときのダックス嬢の瞬間冷凍できるほど冷たい視線。この直後に事件が起こった

じつは、これとちょうど逆な光景を私は見ている。
この事件の前々日に、募集番号305のミニチュア・ダックスがわが家に1泊している。
なかなかプライドの高いこのダックス嬢、ひと目でカンペイのことが嫌いになったらしい。
「ねえ、彼女ぉ〜」と繰り返し遊びを仕掛けるカンペイを、侮蔑とも怒りともつかぬ目でにらみつけていた。
おそろしく冷たいその視線を浴びながら、カンペイは前に出て臭いをかいだり、ふたたび後ろに下がったり、どこか困惑しているようでもあった。

しばらくしてカンペイは意を決したのだろう、さっとダックス嬢に歩み寄ると、前脚をダックス嬢の頭に置いた。
瞬間、ガウッと短い怒りの声をあげ、バネで弾かれたように前に跳びだしたダックス嬢は、後ずさりするカンペイの喉笛から30cmほど手前の空間で上下の歯をカチッと合わせたのである。

カンペイは女子の犬たちにあまり人気がないように見える。
弱っちいところが、生物学的に女子の反感をかうのかもしれない。
「お下がり! お前の子どもなんかほしくないのよ」と。
無視どころか、女子のなかにはカンペイが近づくと叱りつける(吠えかかる)犬もある。
そういうときでもカンペイは後ずさりしながら「でへへ」という感じでいる。とことん平和な男なのである。

その不人気カンペイと仲むつまじく遊んでくれたのがサク女子だった。
2頭の日常の1コマを以下にお目にかけたい。

カンペイが例によって熱心に窓の外を眺めていると、
サクが「兄ちゃん、なに見てる?」と横に並んだ。




遠くのサイレンの音にカンペイがだしぬけに遠吠えのような吠え声をあげた。
サクは目を丸くしてビックリ。「兄ちゃん、気は確かなの」

2012年08月07日(火) No.146