俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

ゲリーさんの来襲と撤退




正直いって、カンペイの下痢がはじまって以降のことはあまり思いだせない。
事態は私の希望的観測をつねに裏切り、チェーンリアクション的に急坂を転げ落ちるように悪くなっていった。
私は後から必死に追いかけ、もう追いつくのに精いっぱいだった。立ち止まって考えるヒマさえなかった。

下痢の始末はたいへんだったが、幸いなことに、下痢についてはカンペイはかなりの確率でシートに排泄してくれた。全部ではない。
回数・頻度がすごかった。
いま庭で排泄したからしばらく安心かなと思うと、もう次のが出ていた。いっときも心が休まらないのである。

私は「クレート作戦」をとることにした。
じつに簡単なプランである。
カンペイをクレートに入れて、一定時間で庭に出す。
カンペイはいやしくも柴のハシクレだから、自分の個室ともいうべきクレート内で排泄するのにはさすがに強い心理的な障壁があるはずだ。
だから、おそらく、おそらくだが、クレート内ではかなりの程度ガマンし、庭に出してあげたところで排泄するのではないか。いや、排泄してくれぇ。

これはわれながらいいプランに思えた。
私はカンペイ入りの大型クレートを横に置いて、ソファで寝ころびながら本を読んでいた。
気持ちよく頁を繰っていると、ピチャピチャと水漏れのような、猫が水を飲んでいるような音が聞こえてきた。
本を放り投げて、ぱっと飛び起きる。
クレートの中を覗きこんで、わが目を疑った。敷きつめておいた新聞紙の上に載った液状の排泄物をカンペイが熱心に舐めていた。
「うぉーっ」
私は言葉にならない声をあげながら、カンペイをクレートから引きだし、そのまま庭に連れだした。
このときの私の叫び声、鬼の形相、力いっぱいカンペイをクレートから引きだした暴力性などを見たカンペイは、しっかりとこれに学び、以後は極力私の目を避けて排泄するようになったのである。


サクが天使に見えたりしたのだから、私もよほどまいっていたのだろう

クレート作戦は早々に放棄された。その後のことは当時のmixiつぶやきから。というより、このあたりのことはいまはほとんど覚えていないのだ。

<下痢頻度増し、もはやクレートに入れてはウンコまみれ必定という判断から、昨晩オレと一緒にソファで寝るが、案の定、午前零時、午前2時、午前3時半とソファを出て排泄に向かう>

<そのたびに、オレは静かに足音を忍ばせて尾行し、物陰から様子を窺い(オレの存在に気づくと排泄をやめてしまうことがある)、排泄が終わった気配を察するや現場に立ち入り、素早く後片づけした>
(注)素早く後片づけしないと舐めるおそれがあった。

<3時間おきに赤ちゃんに授乳するようなものであるが、同じ液体とはいえ、入ったモノが出るときには、だいぶ印象が変わるのであるな>

<このままだとオレの体が心配なので、とにかく下痢を止めるため、今朝、動物病院へ出かけて、薬を山ほどいただいてきた。脱水も見られたので、生理的食塩水の皮下点滴も受けた>

ここで下痢は止まった。
私のゲリーウォーズは終了した。この後、2か月がたつが、カンペイは1度もお腹を下していない。


あのときは、すまんことでした。でへ
2012年07月22日(日) No.142