俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

いい子ってナニよ




いい子、いい犬とは何か。

人によってその定義は違う。
そりゃそうだろう。異性の好みだって、人それぞれ微妙に違う。
そうとうに変わった好みも存在するし、それこそが、この世がなんとか成立している(つまり私やあなたに配偶者がいる)最大の理由であろう。
だいいち単一の価値観なんてゾッとするではないか。

もし仮にあなたが、人の命令にしたがって動く犬を「いい子」と考えるなら、ボニーはいい子ではない。
そもそもボニーはわが家にやってきたとき、ほとんど人の言葉を解さなかった。
知らないふりをしているのではない。
おやつ、ごはん、散歩というラブ必須三大言語に反応を示さないなど、演技ではありえない。
当然、スワレやマテなど何ひとつできなかった。
できるできないというより、そういう人との関係がボニーには未知だったようだ。(もちろん、ラブのことだから、ごはんやおやつでたちまちスワレ、マテは覚えた)
いまも、人の言葉に対する反応は薄い。「そろそろ散歩の時間かな」とか「ボニーのごはんはまだだっけ」などと安心して家内に大声で話せるのはよいところだ。


▲水鳥を追跡したい気持ちで圧倒される

脚側歩行が完璧にこなせて、信号待ちでは飼い主の横にひたっと座るような犬が「いい子」と考えるなら、ボニーはいい子ではない。
彼女の足は、リードを持つ人間の意思とはほぼ無関係に、ふらふらと右に左にさまよう。
その興味は主として昆虫から鳥類にいたるまでの動く生き物全般に向けられる。
とくに同類の犬に対しては全力で挨拶にいかなければならないと固く決めているらしい。このときの力にはかなりのものがある。
駆け寄って、なぜかいきなり相手の口をなめて、思いきりイヤがられる。

じゃあ、ボニーのどこがいい子なのか。
「心」といってしまいたい衝動をおさえて書くなら、それは人との絶妙な関係に尽きるといっていい。


▲どんなに迷惑がられてもひたすら遊びを迫る
2011年07月26日(火) No.117