俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

いちばんいい子




先日、息子の友人がやってきて、しばらく2人で息子の部屋にこもっていた。
もちろん、ユーリも嬉々としてそこに加わる。
とくに犬好きでもなんでもないその友人は、あとからこう言ったそうである。
「お前んちにきた犬で、いちばんいい子じゃん」

嬉しいような複雑なような、「無礼者!」と呼びたい気分もわずかにある。
この友人は息子とは10年来の交遊だから、わが家に寄宿したいろいろな子を両の目で見ている。
テツ(ラブ♂)もブリ(ブリタニー♂)も、その前のボーン(大型MIX♂)も、その他ショートステイの子の一部も、複数いた先住犬だって見ている。

でもって、ユーリが「いちばん」かい……。



とうに20歳をすぎているのに、彼と息子の判定基準はワガママと幼稚さにおいて率直だ。
なによりもまずテレビゲームとマンガ読書のジャマをしないこと。かといって彼らが面倒くさくならない程度には十分な親愛の情を示さなければならない。
(といっても、息子の判定基準は友人とはだいぶ違う。なによりも添い寝してくれることが大事で、その点でユーリにはご不満のようだ。「だって、ユーリは一緒に寝てくれないんだもん」。早く彼女を見つけるべきだと思う)

テツはもちろん失格。
だいたいテツを横においてテレビゲームなんて、できっこないのである。
すぐさま部屋から追い出されるはずで、現にいつも追い出されていた。
他方、じつに興味深いことに、ユーリは、さほど犬が好きでない若者にも好印象で受けいれられている。

多くの人と接するのを見て思うのは、ユーリほど誰からも愛される犬を知らない。
その点では、私の出あったどの犬よりもたしかに「いちばん」なのである。
たとえばテツであれば、「うーん、いい子なんだけどねえ……」という声がかならず聞こえた。

ユーリはとりたてて甘え上手なわけでも、抗いがたいほど愛らしいわけでもない。
体重20kgに達したユーリは、一目で悩殺されてしまうような幼犬的なかわいさも、すでに失っていると思う。
しかし、この子の心根のよさは、ほとんどどんな相手にも瞬時に伝わるものらしい。

2011年01月23日(日) No.100