俺 流
[ Perro Dogs Home 預かり日記 ]
吠えるユーリ(3)
▲コウちゃんの口にユーリの頭がズッポリ
コーギーのコウちゃん(Perro募集番号239)がわが家に寄宿していたときのこと。
ユーリの(ハタ目にはゴミ同然の)蒐集品の数々のうちのほんの1つをコウちゃんがくわえ、座りこんでカジカジすることが何度もあった。
本当にどうでもよいもの、たとえば、噛み残した牛革のかけらなど、そこらを見まわせば2つや3つはすぐに見つかる、そんなものをコウちゃんがくわえだしたとする。
すると――ユーリはすぐさまコウちゃんのところにやってきて、鼻面をつきだし、「これ、全部オレの。返してよ」とちょっかいを出す。
そう、ユーリは、たぐいまれなケチなのだ。
人生の艱難辛苦によって丸く削られたとはいえ、そこはコーギー魂のコウちゃんである。ガウウッと強烈な一喝をユーリにくらわす。
ユーリは、瞬時に部屋の端までふっとぶ。「マ、マジですかァ」と。
ユーリの反応はいつも、笑っちゃうほどオーバーである。
そうして、小さい目で様子をうかがいながら、少しずつ前ににじりよっては、コウちゃんから一定の距離を保ちつつ、ギャンギャン、ギャンギャンと吠えつづける。
これは正直いって、私のようなガマン強い人間にとってさえ、かなり不快な状態である。
わずか数十センチの距離からこの吠え声を浴びつづけているコウちゃんは、しかし、まったく意に介さない。天晴れなことに、表情ひとつ変えず、視線すらやらず、まるで聴こえないかのように、ただクチャクチャと口のものを噛み続ける。
だが、数分後、コウちゃんはペッと戦利品を吐き捨てると、なにごともなかったかのように立ち去る。
はたしてユーリの吠え声に根負けしたのか、単に興味が他のものに移ったのかはわからない。
悠然と、ユーリに一瞥(いちべつ)もくれずに去っていくのだ。
私はこの光景を見ていて、長年すべてに自分勝手に行動し何ひとつ思い通りにならない独善的な連れ合い爺さんの前で、ブツブツガミガミと絶えず小言を言い続ける婆さんの姿を連想する。
相手がコウちゃんだから、気安い関係だから、ユーリはこうやって吠えているわけではない。
ある日出会った初対面のゴールデンに対しても、ユーリはまったく同じように吠えつづけた。その騒音のなかで、ゴールデンはやはり耳が聴こえないように振る舞ったのである。
▲激しい取っ組み合い遊びの後、ゴールデンが水場の前をどっかりと占拠すると、
ユーリは少し距離を置いて「それ、オレんだから」と吠えつづけた。
頭を振って吠えているので写真がブレている。
▼でも最後には、2頭で仲よく水を分け合って一件落着。
2011年01月14日(金)
No.98
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