俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

around the corner




子犬との暮らしは、先の見えないブラインドコーナーが連続しているようなものだ。
コーナーを曲がった先にどんな楽しみが待っているか、どんな大災難が待ち受けているか、飛び込んでみないとわからない。

しかしはじめのうち、コーナーを曲がった先にあったのは、たいていコイツの排泄物だった。私と家内は、じつにしばしば、小水を踏むことになった。
一時は、私のふだん履きの靴下が払底したことがあった。

踏むこと自体は一瞬の不快感を感じるだけで、どうってことない。
厄介なのは、靴下をはいていると、小水を踏んでから感じるまでのタイムラグが生じることだった。
「しまった、踏んだか!」と気づいたときにはすでに、何歩か歩いて、汚染を広めている。
しかしまあ、この場合はある程度、汚染の範囲が特定できるからなんとかなる。
足跡が残るし、少し広めにアルコールとティッシュで拭いてまわればいい。

問題は、コリーの子がすでに小水または大を足で踏んで、好き勝手にあたりを歩き回ってしまっている場合だ。
コイツが汚染源を踏んでしまっていることまではわかっても、しかし、いったい、その足でどこをどう歩いて汚染して回ったかまでは、特定のしようがない。
周囲を探索して汚染の痕跡が見つかれば、その一帯を丹念に拭く。
じゃあ、見つからない場合は? 跡が見えなくとも汚染されているんじゃないの。
じつはそれどころか、すでに部屋中、家中を嬉しそうに歩き回ってしまっていることがある。
悪夢のバイオハザード状態だ。
お前は、人として、いったいどうするつもりか?

いや、その場合の解決法は意外と簡単である。
私が口をつぐめばよい。
何も見なかったことにして、すべてを私ひとりの胸にしまって、黙々と急ぎ排泄物をかたづけ、家族には何も告げずに日々の暮らしに戻る。
すると、不思議なことに、八方丸くおさまるのである。

2010年11月08日(月) No.81