俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

白い紙




馬面(うまづら)のコリーの男の子がわが家にやってきた。
まだ生後3か月ほどの、ほんの子どもである。
先刻は床に小水の池をこしらえ(私が踏んだ)、いま私の足先を尖った乳歯で熱心にかじっているこの子が、4か月前にはどこにも存在しなかったのだと思うと、不思議な気持ちになる。

「人によって汚されていない、真っさらな子という感じですねぇ」
センターから引きだした直後、Perroの引きだし担当スタッフは感に堪えたように言った。
本当にそう思う。
この子を見ていると、人の手による汚れのようなものがいっさいない、真っ白い紙を連想する。
輝くように白く、シワひとつ、手アカひとつついていない。
全面落書きと汚れとシワと破れ目とこぼした酒のシミでいっぱいになった、私のような回収寸前の古紙とは違うのである。



で、真っ白い紙同然の犬と暮らすって、どうなの?
楽しいさ。もちろん素晴らしく楽しい。
ではあっても、それはそれでなかなかエラいことでもある、いうまでもなく。
ときどきエィと両手で丸めてしまいたくなる。

わが家のリビングの床一面は、出現間もないこの生き物のおかげで、ここに住んで以来10数年間見たことのないような大惨状を呈しつつある(公平を期すために言うが、学生時代の私の部屋はもっと大惨状だった)。


▲鳩を追いかけて、追いかけて、追いかけて、えんえんと飽きない。
2010年11月01日(月) No.77