俺 流
[ Perro Dogs Home 預かり日記 ]
弱い心
しばらくぶりにテツのことを書こうと思う。当たり前だ、これはテツの預かり日記なのだから。テツ、すまんことでした。
しかしこの間、じつは薄紙1枚ずつ剥がれていくようにゆっくりとではあるけれども、テツの日常の問題点は解消されていっている。
留守番も心配なくできるようになったし、その間の盗み食いも影をひそめた。
「しまった、パンを出しっぱなしにしてた!」と不安ながらに帰宅しても、何も起こっていない。
夜はたいていの場合、テツひとりで寝場所を見つけて勝手に寝ることができるようになった。
ヒンヒンと後追いする日もまれにあるが、そういうときも私の寝室の扉の前で寝ている。
私がソファで寝ることもほとんどなくなった。
ただ、これは言っておかなければならない。こうしたささやかな前進も、半年以上にわたって人との生活が安定的に続いているからこそ可能になったのだと。
環境が大きく変われば、また振り出しに戻るかもしれない。その可能性が高いだろう。
失敗に終わったトライアル先の奥方(=テツのストーキングの対象となった)と私で意見の一致をみたのは、「テツには弱さがある」ということだった。
募集欄の文章に「雛(ひな)のような怯え」とあるのは、決して修辞的誇張などではない。
テツは人と離れるのを異様に恐れる。
私は最初これを一過性の分離不安だと考えていた。
センターに収容された子の多くがそうした様子を見せるが、時間の経過とともに薄れていく。2週間から、長くても2か月ぐらいで分離不安は解消に向かう。
だが、テツは半年を過ぎても、基本的には変わっていない。
私ひとりでテツを広い公園に連れていくと、テツは片時も私のそばを離れようとしない。カメラでテツの全身像を収められるほどの距離(2メートル程度)をおくのはほとんど困難である。
上の写真は、散歩中にテツをリードで固定して、望遠レンズで数メートル先から写したものだ。
テツの表情には激しい懸念があらわれている。
次にあげた2枚は、広い公園でテツをつなぎ、10メートル以上離れて撮影したものだ。
しばらくすると「こらー、行くなー!」とガンガン吠えだし、次にはリードをぶっちぎってでも全力で私のところに駆け戻ろうとする。その懸命な表情は、胸に迫るものがある。
あとになって、このときのテツのバカ力でリードが壊れかけていることに気づいた。
テツのこうした不安はどこからきているのだろうか。
いったいテツの過去に何があったというのだろう。
2009年12月29日(火)
No.63
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