俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

デーモン・ジュリア(3)――美しき諍(いさか)い女




「ああ、やっぱりジュリア!」と一瞬頬が緩み、すぐに恐縮した。
新しい飼い主さんには、いくつかの書類に書き込んで返送してもらう手はずになっているのだが、そこにはきっちりとジュリアの歯型が刻まれていた。

ジュリアは姿態の美しい子だ。
写真ではうっすらと茶がかっているように見えることもあるが、実際に見ると、全身が艶やかな黒一色の被毛におおわれている。
いわゆるラブ体型ではなく、そこから四肢をすんなりと伸ばし、胴体を引き締めた、見るからに高性能な体躯であり、事実、身軽で運動能力は高い。

だが、ジュリアが何者であるかを強く印象づけるのは、なんといってもその目だろう。
下の写真をご覧いただきたい。
まだ生後4か月ちょっとのジュリアだが、これを、以前の日記に掲載したトラジの目と比べてほしい。
こちらを睨みかえしているのは、不敵な、ちょっとやそっとじゃへこたれない目である。



ジュリアは、そのへこたれなさで、次から次へと何かをしでかす。
千変万化、無限のバリエーションで、しばしも休まず、創作的悪戯を繰りだしてくる。ほとんど天才的といっていい。
これには人間のほうがへこたれる。
伝え聞くところによれば、ジュリアを迎え入れてくださった飼い主さんは、「最初の1か月はノイローゼになりかかった」とおっしゃったそうだ。
そちらの方面に足を向けて寝られそうにない。



ジュリアと好一対をなしたのは、ピッポという男の子だった。
ピッポによって私はそれまで気づかなかったジュリアを知り、ジュリアによってピッポを知った。
2009年11月25日(水) No.59