俺 流
[ Perro Dogs Home 預かり日記 ]
デーモン・ジュリア(2)
▲太鼓腹を突きだしてここから出せと騒ぐジュリアと、これはこれで幸せなプリン(奥)
記憶を呼びおこすために、自分が撮影したジュリアの写真を眺めていて、他のどの子よりも魅力的な表情のカットが多いことに気づいた。
タライに張った水でずぶ濡れになって放心する姿、もの問いたげに首をかしげている顔、風に吹かれて動くビニール袋を無心に追いかけ、鳩に全神経を集中させるジュリア……。
そうだった、思いだした。この子はそういう子だったのだ。
生まれたての小さな体をなみなみとした好奇心で満たして、なにものにも臆せず屈せず、全身を力いっぱいぶつけて試そうとする。
すぐれた楽器のように、そうしたときのジュリアの反応は、ひとつひとつ、じつに色鮮やかで、ニュアンスに富んでいる。見ていて、新鮮な意外性に打たれる。
ああ、この子はいいなあと、思わず賛嘆の声がでたのを思いだした。
▲全力で走るジュリア。右奥には追いかけるプリンの姿が小さく写っている
エネルギッシュという点で、小太郎とジュリアは双璧だろう。
質量が大きく、全体が熱せられるまで時間のかかる小太郎と、軽く反応の鋭敏なジュリア。
小太郎が針葉樹の巨木のようにズドーンと迷いなく一直線に天を向くのだとすれば、ジュリアは照葉樹林のように日にきらめいて無限のニュアンスを生む。
本当はジュリアの生き生きとした写真を掲載するほうが、私の駄文より千倍も雄弁なのだろうが、ここにはそのごくごく一部しか載せられない。
掲載した写真は、生まれて2か月ちょっとのジュリアとプリンだ。
人生の黄昏時に向かってまっしぐらに進んでいる私の目には、どの1枚からも生命のかけがえのない素晴らしさが感じられてならない。
▲上に下に組んずほぐれつのジュリアとプリン
で――ここからがとくに大事なので、声をひそめて話したいのだが、輝かんばかりの生命力を持つジュリアと暮らす代償も決して小さくないのである。
次回はその話を。
2009年11月21日(土)
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