俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

散歩




テツと暮らしていて、「ラクだ〜」と思うことはあまりない。
ほとんど皆無というべきところを、控えめな性格だからこう書いている。
ただし、愉しいこと、嬉しいこと、意外な喜びは無数に味わえる。

テツとの散歩はラクであってしかも愉しいという、希少種に属している。
もちろん、ラクというのはあくまで比較の問題で、「他の猟犬などに比べると」という前フリがつくのだが。

力は強い。
ときおり、何かの匂いをとろうとして予想外の方向に引っぱることがある。
他の犬や人のところに行きたくて、横や斜めの方向に力いっぱい引っぱることもある。
しかし進行方向に私をぐいぐい引き回すようなことはしない。
私より前にはほとんど出ないのである。

そのうえ、散歩の後半になると、「あー、退屈。あー、やってらんねー」という感じで、ずーたらずーたらと脚を引きずる歩きになる。
この若さで、怠けるということを知っているのだから恐れ入る。
そうなると私がテツを引くかたちになり、怠け者となったときのテツはひときわ重く感じる。

テツ君はナミの犬ではないので、ただ単に歩くだけという行為はお嫌いなのかもしれない。
「テツ、バイバイ!」と私が走りだすと、パッと灯りがついたように嬉しそうな表情に一変してピョンピョン跳ね走りする。(上の写真)
疲れているわけはないのだ。



気持ちが盛りあがると、リードをくわえ、このときだけは私の少し前を引いて歩く。
眉根にちょっとシワを寄せ、妙にマジメぶって、「オレ、大事な仕事まかされちゃってるからさ」という得意げな表情になる。
私の先導役を務めているつもりらしい。

テツの日常において、最大の敵は「退屈」(と「空腹」)の2文字だと思う。
散歩は少なくとも1日に2度は絶対に必要だろう。
けれども、長距離を歩く必要はまったくない。
それより他犬との接触など、変化があったほうがいいようだ。

よく、ラブとその飼い主さんが、公園で犬仲間の皆さんと真剣な表情で何か話しているのを見かける。
あれは、いま話さなければならない重要な話題はとくにないのである。
ラブも飼い主の真似をしてお仲間の犬と社交などしているが、それが十分な運動になるとも思えない。
私はセッターと地獄の行軍をしているとき、そうした光景を見るたびに、「あんなんで散歩になるんだろうか」と思ったものだが、ラブはあれでいいのだと、いまになって知った。

小さな声で付け加えると、ラブにおデブが多い理由でもあるのだろう。
(この点で私はラブの飼い主には一言も言及していない。念のため)
2009年09月20日(日) No.48