俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

視線の先




「9・11〜アメリカを変えた102分〜」というドキュメンタリーをケーブル局で観ていた。
なんともいえず気が滅入った。
テレビクルーや素人が撮った、当時のナマナマしい映像を、ナレーションなしにつなぎあわせた映画だった。むろん、つなぎあわせるには、高度の編集センスとテクニックが用いられているのだろうが、それをまったく意識させない。
まるで、あの時間に引き戻されたみたいだった。

人が、理解を超えた大きな厄災に見舞われたときに見せる、あの茫然自失の表情。そのなかで、ひとつだけ残った崩壊寸前のタワーに向かう消防隊員たちの顔には、恐怖と不安を押しとどめている静かな意志の力が見える。
この事件を機に、敵の狂信性と似たイヤなアメリカが出現する。「アラブ人を皆殺しにすべきだ」とカメラに向かって叫ぶ市民が映っていた。クロアチアのツジマンとセルビアのミロシェビッチが似ていたように、敵同士はどこか同じ相貌を帯びる。

いろいろなことが頭をよぎり、胸が張り裂けそうな気分になった。
ふと、足元で横になっているテツに視線をやると、テツはじっと私を見ていた。
その目はありったけの力を振り絞ってこう訴えていた。
「遊ぼ」
「ウンコしたい」
「オヤツくれる?」
「今日はもうご飯ないの?」
「散歩行こ」
「死ぬほど退屈」
(複数回答、五十音順)

突然、天から日が差してきたように、私の憂さが晴れてしまった。

テツ君、それじゃ、一緒に深夜の散歩と参りますか。

※堅苦しい話からはじめてスミマセン。
2009年09月12日(土) No.46