俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

目が語るもの


私が以前属していた譲渡団体で、多摩支所からの犬の引き出しをほぼ一手に担当していた女性がいた。
小柄な女性だった。自分と同じくらいの体重があろうかという大型犬を飼っていた。

その女性がセンターから犬を引き出すときの判断基準を私に話したことがあった。
「その子の目を見るのよ」
目に信頼や寛容、優しさや明朗が見てとれる犬は引き出すが、不信、恐怖、強い警戒、怒りといった色が浮かんでいる犬は引き出さない。たしか、そのような話だったと思う。

「性格さえよければ、あとはどうとでもなるんだから」
そう言いきった。
いかにも大型犬の飼い主らしい剛毅さだなと私は感じた。
そのやり方で、失敗がなかったとはいわない。だが、どんなやり方を選択しても、どれだけ最善を尽くしても、見誤ることはある。

いまになって、そのときの言葉をよく思いだす。
私は目を見て、自分の直感的印象だけを頼りに犬の引き出しを決断できるほど剛毅ではないが、しかし根本において彼女の言葉はまったく正しいと思う。

性格さえよければ、あとはどうとでもなるのだ、と。
そこから先、試されるのは私たち人間の側なのである。



いま私の前にいるブリタニーの双の眸(ひとみ)を見れば、彼女だったらためらわずにセンターから引き出しただろう。(私? 少しためらいましたとも)
無邪気全開でイタズラっぽく輝く目には、不信の影もない。
食餌を「マテ」させるときだけ、内面の葛藤を物語る暗い色がわずかに浮かぶがな。
2008年09月02日(火) No.4