俺 流
[ Perro Dogs Home 預かり日記 ]
うざっ
もう1か月以上前の話だから旧聞に属するが、カンペイが通院している協力動物病院で、子犬のやんばるチャン(募集番号380)にバッタリ出あった。
カンペイが病院通いしている理由は、もう少しあとでまとめて書く機会があると思う。
やんばるは沖縄から姉妹犬(379)と一緒に飛行機に乗ってやってきた。もちろんスーパーシートではなくカーゴデッキで。
私はこの子たちが到着してからそれほど日をおかずに一度ふれあっている。
それから3か月の月日がたっていた。ひと目見て、身体が大きくなっているのに驚かされた。
久しぶりに会ったらあどけない幼児がピカピカの小学1年生に変身していた感じといえばいいか。
病院の待合室でやんばるは、その莫大な好奇心の貯水池をカンペイに向けて蛇口全開した。
進退窮まったのはカンペイである。
「ねえねえ、おじちゃん、どうしてそんなに真っ黒なの?」
「ねえねえ、おじちゃん、飛行機乗ったことある? アタシあるよ」
「ねえねえ、おじちゃん、注射したことある? アタシあるよ」
「ねえねえ、おじちゃん、沖縄って知ってる? アタシ知ってるよ」
――うざっ。えらいのと出会っちゃったなぁ。
「ねえねえ、おじちゃん、追いかけっこしよ」
「ねえねえ、おじちゃん、公園行こ」
「ねえねえ、おじちゃん、いつ遊んでくれる? 何月何日何時何分?」
「ねえねえ、おじちゃん、ウチに来ていいよ。いつ来るの?」
――悪夢かよ。
何を隠そうカンペイの最大の苦手は子犬の女の子だ。
男の子が相手の場合はウガッと蹴散らすことができるカンペイも、相手が女の子だといつも受け身に立たされ、逆・上から目線でよくてタメ口扱いの相手になりさがってしまう。
父性や騎士道精神のようなものがあるはずもないので、不思議である。
カンペイにとっては幸いなことに、ほどなくしてやんばるチャンは診察台に拉致されていったのでした。
最初にあったときのやんばるは、旺盛な活動性(多動性)といくぶんシャイなところが密に絡みあっているように見え、私は「この子には少し難しいところがあるのかもしれない」と思った記憶がある。
しかしこの日あったやんばるは見違えていた。
活動性はそのままに、不要にシャイなところ(過敏さといいかえてもよいかもしれない)がきれいに抜け落ちていた。
動物病院の待合室でやんばるは、怖がって逃げ隠れしようとすることもなく、声をだすこともせず、他の犬に神経質に反応することもなく、子犬にしては十分すぎるほど落ち着いて振る舞っていた。かといってその平常心は子犬の本来的な好奇心の発露をすこしも妨げていないのである。
私は感心した。
やんばるに対してというより、この間この子を預かっていたボランティアさんの努力とご苦労と手腕に対して。
どうやったら、こんなにいい子に育つのか……。
まあ、私が何かを書くより、この子の預かり日記
「中継地点 ~Dogs Spot~」
をお読みいただくほうがずっと早い。
ここに書かれている内容は、活動的な子犬を飼育しようという人への有益な手がかりになると思う。
もちろんこれがそのまま飼育テキストになるわけでは全然ないが、きちんと読みさえすれば、そこからくみとれるものは決して小さくないはずだ。
結局、犬がどう育つかは飼い主の接し方に多く(全部ではない)かかっているのだという当たり前の事実を再認識させられた。
あ、カンペイは別ですけど……(察し希望)。
2015年07月02日(木)
No.187
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