俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

カンペイの受難



仲よく共存する2頭のように見え、事実そのとおりなのだが、
カンペイにとっては嵐にはさまれた束の間の凪(なぎ)のような時間。
前脚で十字をつくって「この子が消え去りますように」とひたすら祈っているに違いない……。
ジャックが乗っているのは昔ニトリの座イスと呼ばれたものだ


ジャックの女の子は人の目にはすさまじくかわいい。
たいがいのことなら許してやりたくなる(たいがいでない場合も多いのであるが)。
ただし、その魅力は柴男子のカンペイになんの効力も発揮しない。
子犬について、多くの成犬はシブシブ受け入れなければならない対象、ひたすらガマンの相手ぐらいにしか思っていないように見える。
すくなくともカンペイはそうだ。

ジャックの女の子がやってくると、一定の距離をおきながら、「なんなのコイツ大迷惑」という暗い表情で、ただただ無視をきめこもうとしていた。

カンペイにとって困ったことに、このジャックの女の子は、そんな軟弱な拒否の姿勢など完全スルーして突撃するのだ。
「遊べー、オマエはあたしと遊べー!」と。
すぐ目の前で甲高い声で吠え続ける。
それはお願いなどという生やさしいものではなく、ほとんど強要、強請というべきだろう。


全然遊んでくれないカンペイに対して「遊べー!」とギャンギャン吠えるジャックの子。
写真ではよくわからないが、じつはカンペイはタヌキ寝入りしている


それでも効果がないと見るや、カンペイの前脚を噛んだりする。
(カンペイは多くの柴の例に漏れず、脚にはものすごく神経質だ。とくに前脚。散歩後タオルでゴシゴシと拭かれるのは半泣きでガマンするが、気持ちよく寝ているところを私に前脚の肉球など撫でられたりすると、電流に当たったように脚を引っ込める。それをパクパク噛むのである、この子は)
これを受難と呼ばずしてなんと呼んだらいいか。

そうしてついに、カンペイの怒りが爆発する。
耐えに耐え、こらえにこらえ抜いた末の爆発、にしては迫力に乏しい気もするが、子犬相手にはこれでも十分である。
ギャウギャウといった柴特有の裏返った吠え声をあげてジャックの女の子へ突進する。
そのただならぬ剣幕に、ジャックの女の子は身を翻して隣りの部屋まで逃げる。

そう、逃げるのだ、気持ちのよいほど一目散に。弱気の目になって。
しかし次の瞬間には立ち直ってもうこの表情。
まったく天晴れな女子なのである。


この負けじ魂
2014年08月21日(木) No.176

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