俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

パニクるカンペイ


前回の日記で私は「どこまでも沈着にパニクる姿」が梅吉クン(Perro募集番号384)とカンペイに共通しているのではないかといったことを書いた。

沈着にパニクったカンペイの最新像をお見せしようと思う。

先日、川沿いの遊歩道にある高さ4メートルほどの土手斜面をカンペイとかけ登った。
土手のてっぺんまで達したカンペイは右に曲がって護岸壁(というほどのものではないが)のてっぺんに設けられた柵沿いに歩きだした。
幅が実質20〜30センチぐらいの狭い、コンクリートのキャットウォークみたいな回廊を興味深そうに進んでいく。


土手のてっぺんで「よいしょ」と向きを変えて矢印の方向へ

ほほう……。
カンペイにしては珍しくちょっと勇敢な行動だなと思いながら見ていると、静かに立ち止まり、ガソリン切れしたみたいにそれきり動かなくなった。
前にも後ろにも動かず、ただ立っている。


そのまま立ち止まって動かなくなった

なにか興味深いものでもあるのだろうか。眺望を楽しんでいるのか。
考えごとをしているようにも見えるが、表情を見ると、柴的アルカイックスマイルが貼りついたままひきつれたようになっている。
沈黙のうちに、誰にも気どられず、カンペイはひとりパニクって動けなくなっているのだと知った。

ふいに、自分が2メートル近い高さの崖っぷちの上にいることに気づいたのだろう。(気づくのが遅すぎるっての)
カンペイは高いところがすごく苦手だ。


い、いつの間にオレこんな高いところに……

自分がどんな場所にいるのかを知ってしまった以上、前には進めず、かといって後ろにさがるのはなお怖い。
左側には柵があるから、そちらには逃げられない。
進退窮まったカンペイには、般若のような笑顔を浮かべたまま静かに立っていることしかできなかった。
声ひとつあげず。
生ける化石となって、護岸壁のてっぺんにへばりついていた。

最後は事情を察した私が抱き下ろして救出したのである。


笑顔が貼りついたようになってるが、本当はパニック。
人間にもこういうタイプの人がある。
気の毒なことに、絶望や悲嘆のどん底にあるその人の表情が他者からは笑っているように見えるのだ。


PS
柴の梅吉クンはどうやらイスに座った預かりさんの太ももに顔をこすりつけるらしい。
カンペイはそういうことを絶対にしないから身もだえするほど羨ましいが、もしかしたら梅吉クンは顔がかゆいのかもしれない。
2014年06月15日(日) No.173

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