俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

チッコウンコ壊滅へ



夕暮れに向かう窓の外を眺める2頭

サクとカンペイの庭遊びは、しかし、そう長時間つづけさせるわけにいかなかった。
2頭は「ウガウガウゲゲガオ〜」とケモノのようなおそろしい唸り声をあげ(事実ケモノなのだが)、マズルに皺を寄せて歯を剥き、背中の毛を逆立てながらぶつかりあう。
これを犬同士のほほえましい遊びだと思うのは、半径100メートルの人間でおそらく私だけだろう。
その大音声(だいおんじょう)の迫力たるや、私の近所での名声を台なしにしてしまうに十分である。
ワンセッション20〜30分ぐらいが限度だった。
で、家に入れると、今度は室内でスタンディングスタイルの戦いを開始するアホバカ2頭を、ときどきは隔離しなければならなかった。
サクをクレートに、カンペイを別室に押しこめて、一時的に休ませる。
そうして、また庭で遊ばせた。

サクは喜々として遊んだ。
足軽以上グレゴリー・ペック未満の男子2名を従えた姫のローマの休日状態である。見るもの聞くもの触れるものがことごとく新鮮で、楽しくてならないのだ。




サク滞在初日は、まずこの2頭をぐうの音もでないほど疲れさせてやろうと私は目論んだが、実際に疲れはてたのは私だった。
サクは少しも疲れたように見えなかった。
サクが動きつづける限りカンペイは動きつづける。サクの動力が停止するまでカンペイと私に安息は訪れない仕組みなのである。

ようやくサクが止まったのは、記憶が定かではないが、その日の夕食が終わってしばらくしてのことだったと思う。

この日のmixiつぶやきに私はこう書いている。
<saku待望のエンジン停止。黒柴→オレと順次エンジンを停止して、マクラを並べて爆睡1時間半>

爆睡から目覚めると、カンペイのシッコが壊滅的なことになりはじめていた。
その日はまだ兆しのようなものだったが、翌日には私の目の前でシッコの秩序はガタガタに崩壊した。
これまで室内ではほとんどシート(とその類似物)周辺に排泄していたが、いまや「シートにも」排泄するという状態。

これ以降、リビング、廊下の奥、玄関脇、洗面所と、カンペイはもうほとんどところかまわずという感じである。
いや、回数・頻度はさほどではないのだ。
ただ、なんといっても1回の量が半端ではない。
水をがぶ飲みしていたのが利いたわけである。
膀胱フル積載の中型犬が排泄する量たるやもう、ティッシュ箱片手に私が泣きじゃくるほどのレベルである。

ひとつには、このとき私は思い違いしていたのだ。庭でヘトヘトになるほど長時間遊んだからといって、カンペイは十分に排泄していたわけではなかった。
サクが庭のあちこちで自在にシッコする姿に惑わされて見失っていたが、おそらくカンペイはほんのわずかの量しか庭ではシッコしていなかったのだろう。
前述したように、カンペイは庭ではめったに排泄しない。それを忘れていた。おまけに水をがぶ飲みである。

そして、それまで問題なかった大のほうも、突然崩壊した……。


2012年07月16日(月) No.140

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