俺 流
[ Perro Dogs Home 預かり日記 ]
サク襲来
サクはPerroの保護犬(募集番号288)である。
現在まだ生後10か月ほどのMIXの女の子。生まれた直後に動物病院の敷地に置き去りにされていた4頭の兄弟姉妹の1頭だ。
4頭のうちの3頭(♂1、♀2)を私たちの会が引きとった。
この3頭には、まっすぐに明るく、体育会的に活発な遊び好きで、人なつこく、他の犬にフレンドリーで、多少のことにはへこたれず、しかし未知のことには少しだけ神経質――といった共通する気質があるように思う。
そのなかでいちばん小柄な女の子だったサクがわが家を訪れたのは、この5月のことである。
当時のサクはまだ生後8か月だった。
ゴールデンウィークの前後10日間ぐらいの日々をカンペイと暮らした――。
やってきたサクはクレートから出ようとして目の前のカンペイに気づき、うなり声をあげて後ろに飛び退いた。
しかし、まばたき3回ぐらいの時間でサクはこの生きものが「まったく取るに足らない存在」であることを直感したらしい。
一瞬にして態度が変わった。
以後は、悠然と、ため口どころか、やや上から目線の振る舞いとなったのである。
カンペイは、サクにとっての遊び相手(ご学友)と侍従長(爺や)とボディーガード(子分)を合わせて5で割ったような位置づけとなった。
一見するとカンペイが鬼の形相で威嚇しているようだが、もちろん遊びの一環。軽く受け流しているサクの余裕の表情に注目
たちまちサク主導で猛然たる遊びが開始された。
おもしろかった。2頭を庭に出して私は飽かず眺めていた。
カンペイは、ときどきは遊びの主導権を握ることもあったが、ほとんどの時間、右に左にいっときも動きを停止しないサクという小娘の嵐のようなペースに引きこまれ翻弄されている。
世の女性一般と同様、サクは男(カンペイ)に追いかけさせるよう仕向けるのが好きだ。
逃げるサク、追うカンペイ。
地形や障害物を考えられないくらいじょうずに利用して、狭い場所で縦横無尽の鬼ごっこを展開する。
とくにサクが好むのは、古井戸の周囲でのドッグファイト(ぐるぐる回って相手の背後をとる=巴戦)である。
前述したように逃げるほうをより好む。
何度も何度も古井戸のまわりを回り、逃げ、追いかけさせ、かと思うと別の場所に走っていって(人間の目にはみえみえの)待ち伏せ攻撃をしかける。
追いかけるカンペイをサクが待ち伏せ、まるで事前のシナリオがあるかのような役割交代がおこなわれる。
今度はカンペイをサクが追う。
(じつはこの遊び方は犬の遊びの「定型」で、誰に教わったわけでもないのに多くの犬が同じようにおこなう)
ドッグファイト。逃げるサクを追うカンペイ。
右手前の古井戸を中心に2頭で円を描いて走る。写真の印象より実際には狭いスペースだ
私はこういう光景を見ているのが大好きだ。
犬たちが創意工夫して遊ぶ姿はすばらしい。
疲れると、2頭はボールに入った水をガブガブ飲む。
カンペイはたいてい1歩さがってサクに先を譲る。
この後に私を悩ます問題となったのは、こうして大量に犬の体内に取りこまれた水の行方であったが、むろんこのときはほほえましい光景としか感じなかった。
2012年07月13日(金)
No.139
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