俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

三年寝太郎




ぬるま湯に全身濡れて暮らすような高温多湿――犬がもっとも苦手とする時季である。
カンペイはわずかでも快適な場所を求めて、ソファ、座イス、床、窓のそば、クレート内……とノマド的に移動しながら1日のほとんどを寝て暮らしている。

意外なことに、カンペイは人生の大半を寝る男であった。
朝6時前後に散歩に出て朝食をとると爆睡モードに入り、昼までのほぼ9割の時間を寝ている。
相撲部屋同然の日課である。
カンペイは声を出さないから、朝食後から夕方までのあいだ、ほとんど存在を主張しない、ときどき動く沈黙の置き物としてこの家に存在している。

カンペイが寝る男に突如変身したのはわが家にやってきて1か月が経過したころだった。
多くの犬は新しい家にやってきてしばらくは本当の安眠ができない。
もちろん初日から仰向けに爆睡する大物もいるが、「ここは安心みたいだな」とホッと緊張をゆるめて爆睡モードに入れるようになるまで、ほとんどの子は数日かかる。ささくれだつように神経質な子だと、2週間程度かかることもある。

しかし、さして神経過敏にも見えないカンペイは、1か月もの日時を要した。これはおそらくわが家での最長不倒距離として記録されるだろう。

環境の変化に適応するのがこれほど苦手な男なのである。

2012年07月07日(土) No.135

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