俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

名前



▲「お前の名前はユーリになりました」「へ?」

この子がわが家にやってくる前に2週間弱のショートステイをしたスタッフ宅で、「コリ男(こりお)」という名前をいただいていた。
コリーの男の子だからコリ男。
なんというか、じつにポエジーな命名である。
こういう命名法はとくに嫌いではないのだが、人から「まあ、かわいい子。名前はなんというのですか」と聞かれて、「コリ男です」とは、今回はさすがの私でも答えにくい。

新しい名前を考える必要がある。
が、すでに私も家内も「コリ男」で呼び慣れてしまっており、老化によって硬化した脳味噌では急転蛇はなかなか難しいものだと悟った。
たとえば、「ベンジャミン・フランクリン」と命名しても、とっさに名前を呼ぶときには「コリ」か「コリ男」になってしまう。
そこで、コリ男とそう遠くない語感で、子犬らしくずっと夢もチボーもある名前を探したのである。
私はウリ(ウリ坊)を強く推したが、家内から反対された。
「お父さんはね、ブリとかテツとか2文字までじゃないと覚えられないのよ」
娘に向かって、聞こえよがしにそう話すのであった。


▲ミルクちゃんが豪快に遊んでくれた。

以下、廃案となったものを列挙する。

コリン=家内が推すが「コリン・パウエル」という実在の人物のイメージがジャマするので却下。
ウリ(ウリ坊)=私のお気に入りだが、家内の反対で却下。
ウィリー=これに決まりかけた。家内は英国王室のウィリアム王子のファンだし、私は全然ファンではないが、ウリと発音が近接しており「ウリ坊」と呼んでも違和感がないから気に入った。
コリゾー=家内が却下。
ブラッキー=公園で昔コリーを飼っていたという人に提案していただいた。日本語的にはラッキーとブラックがうまく取りこまれていて、一瞬心が動いた。家内は賛成。けど、私が「ブラッキー!」と呼んでいる姿を考えると背中がこそばゆくなる。コリ男と語感が離れすぎているのも私には困難要因となる。なにしろ2文字までしか覚えられないそうだからな。

結局、ユーリになった。造反有理のユーリではない。ロシア名のユーリからとった。
じつはケーブル局で20年ぶりぐらいに「話の話」を観て、作者であるユーリ・ノルシュテインの才能にあらためて感銘を覚え、その勢いで決めてしまった。
ユーリなら、間違えてウリと呼んでも誰もわかりゃしないし。
家内は「ユリちゃんって女の子みたいね」とは言ったものの、それ以上の反対はしなかった。
泥沼の命名ゲームに、うんざりしてたらしい。

しかし、家内も私もいまだ「ウリ(坊)」とか「コリ(男、坊)」と呼んでいるのはなぜだろう。

ふと体重を測ったら、11kgを超えていた……。


▲アダムとイブのように、大事な部分を葉っぱで覆っているところはさすがだ。
2010年11月13日(土) No.83

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