俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

コリゾー




気持ちよく晴れた朝、公園の芝生でコリーの子と遊んでいると、めいめいが犬を連れた犬仲間と思われる5、6人のご婦人方が声をかけてきた。
「子犬ですかァ?」
「この子、コリーでしょ。違います?」

私と子犬の記念すべき公園デビューである。
私は非社交的な人格のため、こういうとき、自分に少し無理強いをしなければならないのだが、ご婦人方は鷹揚で犬談義に屈託がなかった。
もちろん私がどんな偏屈オヤジであろうと、この子の社会化のために、いまはできるだけ人や犬と接触する必要がある。たいせつな時期なのだから。
それにもしかしたら、いつの間にか、私の社会化もできてしまうという一挙両得になる可能性もあるではないか。

「わぁー、大きい足して、かわいいー」
「どのくらい大きくなるんですかねえ。楽しみー」
いかにも犬飼いらしい、ざっくりとした温かい言葉で歓待してくれる。
ただし、体をくねらせて遊びたがっているコリーに対して、ご婦人たちが連れていたどの犬も、「チッ、子犬かよ。ウザすぎ」という態度に終始する。
下の写真のゴールデン君はすぐに背中を向け、遠い彼方を見やって瞑想にふけりはじめた。


▲いちおう身元の確認だけだからさ

しばらくして、ご婦人方に、このあたりでコリーを見かけたことがないか尋ねた。
「そういえば、コリゾー君って子がいたわねえ」
皆の笑い声があがった。
コリゾー……?
「コリゾーって名前、一度聞いたら忘れられないのよね」
そうそう、と皆がうなずく。

じゃ、コリゾー君というコリーが近所にいるんですね。
「いいえ、東松山の公園で会ったのよね。あまり面白い名前だから記憶に残って」
ひ、東松山!
それくらいコリーと出会う頻度は少ないのである。

しかしその瞬間、私にひらめくものがあった。
まだ名前の決まっていないこの子に、コリゾー(コリ蔵またはコリ僧)という名前はどうだろう。
一度聞いたら忘れられない名前らしいから、これは名案ではないか。
家に帰りつくやいなや、家内に「コリゾーってどうかな、コイツの名前」と提案した。
「イヤよ、そんな名前」
……。
コリゾー案は瞬時についえた。


▲別の日に、美しいシェルティ2頭と。遠い係累だからといって特別扱いはいっさいしてもらえません。
2010年11月12日(金) No.82

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