俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

マーキング





♂の柴というと、散歩中に彼らがランドマークと考えるあちこちめがけて、シコでも踏むように脚を豪快に上げて排尿するイメージを多くの方が抱いているのではないだろうか。
柴のサンペイはそういうことをしない、まったく。
排尿時に脚を上げないし、そもそも散歩中の多数箇所マーキングという習慣がない。

神から与えられた使命のようにそれをいたすのは、遺憾ながら、テツのほうなのである。



テツは散歩中に出あった垂直線に向かって飽くなき放尿を企てる。
電柱、塀の角、交通標識のポール、遊歩道の車止め、工事現場に置かれたコーン……。
私はテツが不審な素振りを見せたら、「ついて!」と声をかけてリードを引いて進むが、テツもすかさず対抗策をくりだしてきた。
垂直線の横を通りかかった際、ほんのわずか、1秒でも私が気を逸らした瞬間、すれ違いざまに早業でサッと少量の小水を振りかけているのである。ほとんど足を止めず何食わぬ顔で白昼の通り魔のように。
私が気づいたときにはほぼ手遅れとなっている。

ただし、繁華街ではまったくマーキングの素振りを見せない。
ほかに気をとられているのか、もしかしたら、別の雄犬の排泄液が過去にその場を濡らしていない場合は、排泄欲が起きないのかもしれない。



ときどき、サンペイとテツの違いはどこからくるのかと考えることが3秒ぐらいある。
テツのほうがスケベだからだとか、マッチョだからでは、たぶんないだろう。
犬は単純な機械ではない。いろいろな要因が相互作用しながら犬の行動をかたちづくっていると考えるべきだ。
けれども、この2頭の行動の差には、去勢手術のタイミングがひとつの大きな理由になっているのではないかと私には思われる。
2010年03月27日(土) No.69

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