金持ちのある猟師が、当時九万リラで、アルバを譲ってくれと申し出た。立派な牝牛が買える値段だったし、家計も楽ではなかったが、老いた父親までも、うんとは言わなかった。そうなのだ、金銭の問題ではなかった。(『雷鳥の森』マリオ・リゴーニ・ステルン著、志村啓子訳、みすず書房)