俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

因果関係




テツは排泄に失敗したことがない。
わが家で暮らしはじめて2日目に(初日でないところに注目していただきたい)、意図的に2か所に排泄した以外は、一度も粗相というものをしたことがなかった。
だから、蛇口の壊れた水道管のようなジャジャ漏れ3連打には首をひねらざるをえなかった。

呆然と頭をめぐらしているうちに、
「まさかアレか……」
突然、床に転がっていた空鍋とテツの大量失禁が私の頭のなかで結びついたのだった。

私はすっかり忘れていたのだが、コトの前日、わが家ではベトナム・フォーを食した。
その際、具となる鶏胸肉を水煮していた。
ゆで汁は捨てずに鍋に残しておいた(別に鶏スープを煮だしてあったので、つかう必要がなかった)。
少なくとも1リットルから1.5リットルはあっただろう。

それが消えていたのだった。
あまりにもみごとに。
鍋にも、周囲の床にも、そこにかつて液体が存在したことを証明する痕跡の半滴すら残っていなかった。
私自身、中身があったことをコロリと失念したほどである。

あまり想像したくないのだが、おそらくこういうことが起こったのだろう。
あちこち食べ物をあさったテツは、ガスレンジに行きついた。
そこに置かれていた鍋をゆで汁ごとひっくり返し(事後検証してみたが、鍋に鼻先を突っこむことは難しい高さだった)、鍋と周囲にこぼれた大量の液体を丹念になめきったのである。
つまり、きれいに乾いているように見えた鍋と床は、乾燥したテツの唾液でくまなく覆われていた――と。

私が入念に鍋を洗い直したのはいうまでもない。
2009年08月13日(木) No.37

No. PASS