俺 流  [ Perro Dogs Home 預かり日記 ]

最初の疑惑


「あー、こんなことしてる。テツでしょ!」
家内がテツに怒るフリをして私を叱る。
呆然と手にしているのは、ぐちゃぐちゃっと正体なく潰れたビニールだった。
その本来の姿を私は知っている。台形を2つつなげたようなかたちをしたサンドイッチ用薄切りパンの包装パックである。
もちろん、最後に私たちが目撃したときには、中身のサンドイッチパンも入っていた。



3時間ほど留守にした後、こうなっていた。
テツだ。盗み食いをおこなったのだ。
付け加えるなら、私たちの気づいた最初の盗み食いを。

「留守している間に、テツがキッチンテーブルに置いてあったパンを食べちゃったんだよ。包装パックを食い破って」
そう一件を報告すると、Perroの代表者は言った。
「食べられるものを置いておくのが悪いんですよ」
神奈川コパン(Perro神奈川支部)の代表者格に同じ話をすると――
「食べられるところに置いとくのが悪いんだよ」

相手に対する敬意の有無や言葉づかいの良し悪しを除けば、言っていることは奇妙に同じだ。
お前が悪い、と。
やっぱりねえ。ハナから共感や同情の言葉は期待できないと思ってましたけど。
皆さんにもお知らせしておくが、筋金入りの犬飼いとはこういうものだ。
犬の飼育について、めったなことではおやすい同情はいただけない。
そして、もっと残念なことには、彼女らの言葉はじつに正しい。
とれるところに置いておく人間が悪いのだ。犬の本能は、食べ物をとるように命じるのだから。

それは私も知っていた。
しかしテツを置いて出かけるとき、私の頭にあったのは別の心配だった。


薄切りサンドイッチパンのオリジナルのかたち
2009年08月08日(土) No.34

No. PASS