「親族の恥をさらすようですが……」
その女性が電話口でおずおずと切り出したのは、チワワの多頭飼育の話でした。
縁戚にある老夫婦が、チワワを飼ったのはいいが、避妊も何もせずに放漫飼育した結果、どんどん子が増えてしまった。そこにはおそらく近親交配も含まれるのだろう、と。
問題は単に数が増えたにとどまらず、チワワたちの飼育環境が正視に耐えないほど劣悪だということでした。

そこで目の当たりにしたのは――大型犬を2頭飼育しながら子育ての真っ只中にいるその女性に、ただちに行動を強いるほど悲惨な光景だったのです。

この1月、Perro Dogs Homeに相談が寄せられました。
私たちが救援のお手伝いをしようと決めたのは、女性が自分ひとりでもチワワを助けだす決意をお持ちだったからです。
ひどい状態にあるチワワのうち5頭のメスを説得の末に引き取り、異臭を発している子たちをシャンプーし、栄養を与え、病院で診せ、ワクチンを接種し、投薬し、避妊手術を施し……そして新しい飼い主さんを探そうと決意なさっている。

また、多頭飼育の劣悪な環境で、これ以上、不幸なチワワを増やさないために、少なくとも全頭のメスを連れ出すことが早急に必要だという認識がありました。
残りのオスについては、女性が時間をかけて1頭ずつ救援していくと話しています。

日をおいて、はじめてチワワたちと対面しました。
一瞬、目の前にあるものが信じられませんでした。これが、3歳から、せいぜい5歳前のチワワなんだろうか?
どの子も、私たちの目には老犬としか映りませんでした。

センターで私たちが救援する犬たちでさえ、よほどの高齢犬を除いて、これほど状態が悪い例は少ないと感じたほどでした。
後にこのチワワたちを診た獣医師は、「知らずに診たら、10歳以上と判断したかもしれない」と話していました。

こみあげてきたのは怒りではなく、申しわけなさと哀しみの入りまじった感情でした。
人は悪意によって非道で残酷なことをおこなう生き物です。しかし、悪意の存在なしにここまで残酷な仕打ちをなしてしまうところに、より深い、そして救いようのない人間性の闇を感じさせられます。なんと哀れな人間たち、なんの罪もない、罪という意味すら知らないチワワたちには本当にすまない気持ちでいっぱいになりました。
君たち、ごめんなさい。

安売りの缶フード、それも単一銘柄だけを食べさせ続けた結果、チワワたちの歯はびっしりと鎧のような歯石で覆われ、歯肉が病んでグラグラでした。口からは、鼻をつく悪臭がしました。
長期にわたる不適切な飼育――栄養の偏り、密集飼育、運動不足、日常的なケアの完全な欠如――が、この子たちの体を蝕んでいました。1頭は衰弱して、ドライフードを自力で食せない状態でした(この子については、「里親さんにお渡しできる状態にない」と判断した女性が面倒を見続けることになりました)。
残りの4頭も、全身状態はよくありませんでした。

しかし救いがありました。
どの子も性格がとてもよいのです。
こんな逆境にあったのに、いや逆境にあったからこそ、魂の無垢な部分が残されたに違いありません。
そして、この子たちの若さが、体の急速な回復を可能にしています。
世に多く見られるガウガウチワワとは対極的な子たちがここにいて、新しい飼い主さんの出現を待っています。
この子たちの2度目の「人生」を、失われた時間を取り戻して余りある喜びに満ちたものにしようと私たちは決意しています。